日本語という、英語からもっとも遠い言語を母語に持つ私達は、他のどの国の人達よりも長い時間をかけて勉強する必要があります。

しかし実際にはそこまでの必要性に迫られていないため、時間をかけられる人が少ない、結果として英語が使えるところまでたどり着ける人が極端に少ない、

これこそが日本人が英語が苦手な理由です。

日本人が英語を使えるようになるには、恐らく3000時間程度が必要。もちろん英語の場合はゼロからのスタートではなく、学生時代の貯金もありますよね。

中高の授業時間が約1000時間程度、ただしどう取り組んだかによってその「貯金額」はバラバラです。

ここでは仮りに大人になってから2000時間の勉強が必要としましょう。

もし一日30分のペースでやるとすると、そこに達するのに最低でも10年以上かかることになってしまいます。

この「苦しくない程度」の取り組み方での成功の確率はきわめて低い、だから一日に「数時間」を英語にかける必要があります。 

もし毎日2時間やれば、1年で700時間以上になりますから、3年以内に2000時間をクリアできます。 

それではまだ遠すぎると思われるなら、毎日3時間。これなら2年でクリアできます。

このように「毎日数時間」やって初めて、「使えるところまで届く」ことが見えてくるんだと。

しかしそもそも必要に迫られていないのに「努力を継続する」しかもそれを「数千時間レベルで」っていうのは、かなりの難題ですよね。

この不可能に見えるタスクの攻略を可能にする唯一の方法、それが勉強の「習慣化」です。

「英語を習得できた人」とはイコール「英語の勉強の習慣化に成功した人」なのです。

「毎日数時間」の勉強を、歯磨きと同じレベルの「習慣」にしてしまうこと。もう「やらないで寝るのは気持ち悪い」というところにまで持っていくことです。

ではどうしたらそれが叶うのでしょうか。

勉強を継続するためのただ一つの秘訣

習慣化の秘訣はただ一つ。意志の強さ、モチベーションに一切頼らないこと。ここに頼っている限り、必ず挫折します。

そうではなく、意志の強さに頼ることなく続けられる「環境」を作ってそこに身を置くこと、これがすべてです。

そういう「やらざるを得ない」環境に自らを追い込む人の例として「Willpower doesn’t work(意志の力は役に立たない)」という本の中で John Burke というピアニストの例が紹介されています。

彼は今の自分の技術では弾けないレベルの曲を作曲するのだそうです。で、それを弾けるようにするためには猛練習が必要。

そのためにどうするかというと、最初にその曲を含んだアルバムを作ることを決め、レコーディングするためのスタジオを予約し、スタッフの予定も押さえてしまうのだとか。

その録音の日までに自分のスキルをその曲を上手に弾けるレベルにまで高められるかどうかもわからない段階で。

つまり先に締め切りを作ってしまうわけですね。どうしても動かせない締め切りを。ここまでやってしまうと逃げられません。

もちろんスタジオの予約、スタッフの人件費などは自腹で、しかも先払い。

自分にとって痛い額のお金を払うことで、これを無駄にしてはいけない、という気持ちが強く芽生えるでしょう。

これはサンクコストと呼ばれています。例えば映画館に映画を観に行き、その映画がつまらない、と感じたとします。でも、わざわざ映画館まできてせっかくお金を払ったのだから、最後まで観ようという気持ちが湧きますよね。 

もし同じ作品を、家でNetflixで観ていたら、すぐに停止して別の作品を探すでしょう。

この「せっかく払ったお金を無駄にしたくない」という気持ちを利用するのです。

まだこれで終わりではありません。彼にはたくさんのファンがいますが、そのファンに対してSNSで、アルバムを製作中であることを伝えます。まだ本当にそれが録音できるレベルに到れるかわからない段階でです。

これによって多くの証人ができることになり、そうなると「はい、駄目でした」と簡単には裏切れなくなりますよね。

人間が持つ「自分は一貫性がある人間である」と他人から思われたい気持ちはとても強いものですから。

こうやって、「どうやっても逃げられない、もうやるしかない」という状況になるように、そういう環境をわざわざ自分で作るわけです。 

これによって「意志の強さ」に一切頼ることなくしっかり取り組めるように、いわば「努力を自動化」させると。

これぐらい徹底させるわけです。

成功した人とは意志の強さに頼らなかった人

他にも有名な例では

「レ・ミゼラブル」の原作者ヴィクトル・ユーゴーは、執筆時に使用人に持っている服を全部渡して、全裸で書いていたと言います。もし執筆が嫌になって外に出たくなっても、服がなければ外に出られませんよね。

また、極真空手の創始者である大山倍達は、若い頃に山にこもって修行しましたが、その際には修行が苦しくなっても簡単に山を降りられないように、片方の眉毛を剃り落としたといいます。そうすればみっともなくて人前に出にくいですからね。生え揃うまでは山にいるしかない。

あれほどの文豪・達人でも、そうやって「やらざるを得ない」状況に無理やり自分を追い込んでいたと。それは意志の強さに頼っていてはいずれ負けてしまうからです。

歴史上最も成功した語学のプログラムは、第二次大戦中の米軍によるもので、その成績優秀者には昇進が与えられ、逆に成績不振者は「最前線に送られる」という厳しいペナルティーがあったといいます。

もうやるしか選択肢はありませんよね。

いいですよね。一切の意志に頼らなくても済むような、「やるしか他に選択肢がない」状況に自分を追い込むと。これが成功の秘訣。

失敗するのは自分の意志の強さを試そうとする人です。

「毎日数時間」を可能にするスケジュール

そこまで極端な方法が取れない、という場合も、「自分は意志が弱い」ということを前提に、その弱い自分でも勉強をせざるを得ないという環境づくりを。

まずは朝方にすることです。睡眠を取って脳が休養十分の朝は、一日の内でもっとも自分をコントロールしやすい時間帯です。これを最大限に利用すること。

枕元にイヤフォンを置いておき、目が覚めるとすぐにそれを耳に入れ、リスニングを始める。

読むことと違って音は勝手に耳から入ってきます。さらに朝は、仕事をしている方の場合「何時までに家を出なければならない」という締切があることで、集中しやすいということもプラスに作用します。

目が覚めてから仕事に出かけるまでに1時間ぐらいかかるという方は、普段より30分早く起きるようにする、そうすれば家を出る「まで」に1時間半を積み重ねられます。

そして通勤時間は当然すべてを英語に充てます。家の中はもっとも誘惑が多い場所ですから、外出中は最大のチャンス。

歩いている最中、そして電車や車の中をフルに活用しましょう。ドア・ツー・ドアで職場まで1時間あるなら往復で2時間を稼げます(もっと近いならひと駅分歩くなど遠回りを)。

この上に昼休みに30分、そして帰りにカフェなどに寄って1時間やれば、帰宅するまでにすでに5時間ですよ。これをディフォルトにしてしまう。

で、家に帰ってからは余力に応じて1~2時間ぐらい。こうすれば3時間どころか、6~7時間を英語に充てることだって決して不可能ではないはず。

朝の自分をコントロールしやすい時間帯を利用すること、そして家の外にいる間にできるだけ時間を稼いでしまう、これが秘訣。

家で勉強をする、という場合、「誘惑」という意味ではご自身の部屋の中は最悪の環境だと言えます。たいてい自分の好きなものに囲まれているはずですから。

他に自由に使える部屋があればそこを利用するのがいいですが、一つしかないという場合は、部屋の中をいくつかの空間に分けましょう。座る場所・見える角度を変えるなど工夫して。

そしてそれぞれの空間に役割を持たせると。例えば「ここは勉強する領域」「ここはリラックスする領域」など。そしてその空間ではそれしかやらない。勉強の空間では勉強のみ、ですから目に一切の誘惑が入らないようにしておきます。

また、誘惑に対するハードルを上げるために、勉強の際に重い机を動かして椅子と机とで自分をはさみ、簡単には身動きが取れないようにする、というのもありです。 

まぁ一番いいのは外で勉強することです。図書館・カフェなどを利用して。人目があると、人間は格好つけようとするものですから、それによってサボることを防げます。 

休日は朝の開館から閉館まで図書館で過ごすと決める。そして帰って少し復習を、とすれば8時間以上だって夢ではありません。

家族がいらっしゃって、そんなに自分のためだけに時間を使えない、というなら頼みましょう。「自分の人生を変えるためにどうしても英語を習得したくて、そのためには毎日時間をかけなくちゃならない。今から3ヶ月だけ集中させてほしい」と。

そういう人間を応援しない家族がいるでしょうか。

また、先ほどのピアニストの例と同様、こうして人に宣言することによって、それがまた継続を助けます。ですから「裏切れない」「がっかりさせたくない」と思う人に宣言するのが一番です。

とにかく意志の強さに頼らない、がキーワード。意志に頼っていてはいつか必ず負けますから。

「毎日数時間」を習慣化させるために、このスケジュール、ぜひ取り入れてみてください。

※ noteにて、英語学習に役立つ沢山のヒントを書いています。ぜひ訪れてみてください。

なかじま🍁英語やり直し