最短で上達するためのトレーニングの本質
大きな遠回り
これまでにもお伝えしているように、自分のケースでは、話せるようになるためにはとても苦労しました。
話せるようになりたくて、毎日最低でも2時間の勉強を2年半続けた結果、話す力が以前より落ちていることに気付いて愕然とする、という最悪の結果に終わったと。
これだけ真面目に勉強を続けてきたのに神も仏もないものか、とそこで気持ちが切れてすべてを投げ出しそうになりましたが、捧げてきたものの大きさを考えるとそんな簡単に諦めることはできず(これこそが前にお伝えした「サンクコスト」です)、
仕切り直して勉強法を一から見直すことに。
で、そこでようやくアウトプットの「本質」に気づき、それまでの自分に足りていなかった部分を鍛えることに集中した結果、そこから半年後に英検一級に合格したのです。
トレーニングの「本質」を押さえているかどうか。ここがわかっていなければ、自分のように大きな遠回りをすることもあるということ。あなたの今の勉強は大丈夫でしょうか。
ではここから、英語学習を効率よく進めるためにぜひ知っておいていただきたい、その「本質」の部分のお話をしていきます。
インプットとアウトプット
英語が使えるようになるためにもっとも大切なこと、それはインプットとアウトプットの量を積むということ。それも大量に。
何をいまさら当たり前のことを、と思われるかもしれません。
ではインプットとは、アウトプットとは何ですか?
インプットとは、リスニング(聞く)とリーディング(読む)を指し、
アウトプットとは、ライティング(書く)とスピーキング(話す)を指す。
その通りです。それを大量に積めばいい。
でももっと大切なのは本質をきちんと押さえること。
例えば音読はこのうち、どれに含まれるのでしょうか。
口から英語を出しているからアウトプット?
違います。
ただ単に口から言葉を出せばアウトプット、ではないのです。大切なのはここ。
アウトプットの「本質」
アウトプットの本質は、「伝えたいメッセージを英語で表現する」ことです。
「この場面ではこれを言いたい」と考え、その言おうとすることを持てる知識のすべてを駆使して英語で組み立てる。
それを文字にすれば「書く」ことになりますし、音で口から出せば「話す」ことになります。これがアウトプット。
そもそも口に出したり、文字に書いたりしなくてもいい。頭の中で「この場面ではこれを言おう」と考え、その言おうとすることを英語で組み立てる、それも十分アウトプットだと言えます。
ゼロから組み立てなくても、丸暗記したものを、「この場面ではこれが使えるな」と思い出すこともアウトプットに含まれます。
とにかく「自分が伝えたいメッセージを英語で表現する」こと。
音読がどうしてアウトプットではないかというと、それはすでにあるものをただ読むだけだからです。
自分が英語が話せるようになりたくて、2年半もトレーニングを続けたのに話せるようにならなかったのは、この本質を外していたからです。
英語のできそうな誰かが言っていた、音読・シャドーイングはスピーキングの練習になる、という言葉を鵜呑みにして、それを続けてしまったため。
→ 正確に言えば、アウトプットは何を話そうかと考え、それを英語にするという「計画」の段階と、できた英語を口から出すという「発話」の段階からなります。音読・シャドーイングが役立つのは後半の発話の段階、ここがスムーズになるということ。
でもどれほど「発話」の段階を鍛えようとも、「計画」の段階を鍛えないことには、何も口から出てきやしません。
反対に、そこから6ヶ月で英検一級の面接に合格することができたのは、このアウトプットの本質を押さえたトレーニングを一人でひたすら積んで鍛えていたから。
すなわち、「自分が伝えたいメッセージを英語で表現する」、その量を大量に積んだのです。
さらに言うと、英検で合格するまでに外国人と会話した経験すらほとんどありませんでした。
そう、アウトプットの力を高めるために相手すら必要ないのです。なにしろ「自分が伝えたいメッセージを英語で表現」する、その機会をできるだけ持てばいいのですから。
独り言も当然アウトプットに含まれます。
とにかく「この場面ではこれが言いたい」ということを、自分の頭の引き出しに入っている語彙や表現の知識をフルに駆使して「ではこう言おう」と組み立てること。
インプットの「本質」
ではインプットの本質は何かというと、それは英語を読んで・聞いて、そのメッセージを「理解」することです。「理解」することがカギ。
逆に言えば、理解できないものをいくら読んでも・聞いても、それは英語の習得に必要なインプットにはならない、ということ。
うちの母はもう何十年と韓流ドラマを見続けていますが、韓国語は一切わかりません。それは韓国語で理解をしていないから。日本語の字幕を見て、日本語で理解しているのです。
大切なのは「英語で」「理解」すること。
一時「聞き流すだけで」英語がマスターできる、という教材が流行りましたけど、聞き流しちゃいけないわけです。「理解しよう」と必死で頭をフル回転させて聞かなければ。そう、理解というのは頭を使う作業なんです。
いいですよね。英語を習得したければ、読むにせよ、聞くにせよ、とにかく英語で「理解」する経験を持つこと。それを大量にです。
「準備」のためのトレーニング
ただし、では英語を習得するために、インプットとアウトプットの量を大量に積みなさい、と言われても困ってしまうでしょう。
例えばリスニングであれば、何を聞いても一瞬で音が流れていってしまって何を言っているかわからずに終わり、理解どころではないという方も多いはず。
そういう場合は、「聞いて理解」できるようになるための「準備」のトレーニングを、インプットの前に積まないといけないのです。
音読・シャドーイングなどはそのためのトレーニングに含まれます。
つまりインプットができるようになるための準備ですね、これが必要なんだと。もちろん音読しながら「理解」すれば、それは「インプット」をしていることになりますが。
シャドーイングもアウトプットのトレーニングとして考えられがちですが、実際は「音を聞いて、それがどんな単語からなっているかを把握できる」ようにするための、インプットの「準備」のトレーニングです。
また、スピーキングのトレーニングとして「瞬間英作文」が有名ですが、あれはアウトプットで「自分が言いたいことを表現」するために、言えることを増やす、すなわちアウトプットの「準備」のトレーニングだと言えます。
ですから言えることを増やすのには役立ちますが、あれだけやっていても話せるようにはなりません。
英語の「勉強」とは
・アウトプットとは「自分が言いたいことを英語で表現すること」
・インプットとは「読んで・聞いて、『理解』すること」
とにかくこの本質を押さえること。声を出していれば「アウトプット」ではないわけです。ここは、英語を教えている人ですらわかっていない人がかなりいるところです。
そうしてもし英語を読んで・聞いて理解ができて、さらに自分が言いたいことを表現できるようになったら、
要するに英語が「使える」ようになったら、後はただ「使う」機会を増やすだけですから、そうなったら好きな形で英語に触れることで上達していくことができます。
海外ドラマが好きならドラマを観ていることで上達できるし、会話が好きなら誰かと英語で会話をすることで上達できていく、ということ。もうこうなったら「勉強」ではありませんよね。
ですからいわゆる「勉強」というのは、そこに至るまでの取り組みを指します。
つまり読んで、聞いて「理解」できるようになるための、そして自分が言いたいことを英語で表現できるようになるための「準備」のトレーニングを「勉強」と呼ぶわけです。
英語で成功するための最大のカギはその「使える」ところまでできるだけ早くたどり着くこと。そうなれば後は楽しいだけですからね。
ここまでをまとめると…
・インプットとは「英語を読んで・聞いて、『理解』すること」、アウトプットとは「自分が言いたいことを英語で表現すること」
・ただしそこに到るまでの「準備」のトレーニングが別に必要
・この準備段階を「勉強」と呼ぶ。ここを最短で駆け抜けて、「使える」にたどり着いてしまえば、後は楽しみながら英語に触れることで上達していける。
あなたが今取り組んでいるトレーニングは、この中のどれにあたるでしょうか。ただ漠然とこなすのではなく、これはインプットができるようになるための「準備」である、のように、しっかりとその目的を意識することで、効果もまた高まります。
ぜひ参考になさってください。