効率よく上達するための「方程式」
ここまでは時間のことについてしか話してきませんでしたが、実際の上達を決めるのは時間だけではありませんよね。
例えばタクシーの運転手は仕事で「毎日」「何時間も」車の運転をするわけです。30年のキャリアがある運転手は、車の運転に数万時間をかけていることになります。
ではだからといって、30年運転を続けている運転手が、F1ドライバーと同じレベルの運転技術を身につけられるかというと、そんなことはないはず。
30年、という時間を積み上げればその分だけスキルは伸びていくわけではないということ。何十年とずーっと同じレベルに留まることだって十分に有り得るわけです。
では上達を決めるのは何かというと、トレーニングの質・強度です。
つまり上達は「時間 × トレーニングの質」という式で表されるということ。
どれだけ集中して、負荷の高いトレーニングを積んだか、それを何時間やったか
「才能を伸ばすシンプルな本」という本の中では、その上達につながる強度の高いトレーニングのことを「深い練習」と呼んでいます。
「深い練習」であることの要件は以下の4つ。
1、背伸びと繰り返し
2、意識の集中
3、明確な目的意識
4、強力で迅速なフィードバック
それぞれの要素について詳しく見ましょう。
1、背伸びと繰り返し
「背伸び」とは自らのコンフォート・ゾーン(心地よくできるレベル)から飛び出し、それまでできなかったことに挑戦しようとすること。自分の限界を超えたところに手を伸ばそうとすること。
「深い練習」の特徴とは
① ぎりぎり手が届かない目標を狙って能力を限界まで発揮する姿勢と、② 集中して繰り返すことである。
つまりラクラクできることをやっていても成長しない、ということ。自分が100%集中した状態で「かろうじて」できるかな、というレベルのことにトライする必要があると。
それを「繰り返す」ことで、そのスキルを自分のものにしようとする取り組みも大切。
深い練習は時間で測定するのではなく、質の高い「背伸び」と「繰り返し」の数で測定される。
単に時間を重ねるだけじゃ駄目だということですね。
「深い練習」は常に自分の現在の能力を上回る課題に挑戦し続けること。限界に近い努力が求められるため、一般的に楽しいものじゃない、むしろ苦しさを伴うものだと著者は言っています。
「苦しい」ことはつい避けてしまいがちですが、それでは上達していけないわけです。
時間よりも、こういう「深い練習」をどれだけやったか、で上達は決まるということ。先ほどのタクシーの運転手の例では、30年という時間はかけていても、日々の中でこうして自身の限界に挑戦するような努力はしていなかったでしょう。
あなたの勉強の取り組みは、上達につながる「深い練習」だと言えるでしょうか?
2、意識の集中
すでに見た「背伸び」の時点で、意識を100%集中させないとできないようなことに挑戦することが必要だ、と言っていましたよね。
やるべき作業に全神経を集中しなければ、たいした進歩は望めない
他のことを考えながら、なんとなくやっていては大した効果は望めない、というのは頭ではわかっていますが、厳しい言葉ですよね。
LINEの通知にいちいちソワソワしながらやる、なんてもう論外なわけです。前回お伝えしたように、わたしたちの中の「動物脳」は気をそらさせようといつでも待ち構えています。
集中できる「環境」を作り、100%意識を集中させないとできない課題に挑戦すること。
3、明確な目的意識
ただ漫然とこなすのではなく、しっかりとした目的意識を持って取り組むこと。
「うまくなりたい」といった漠然とした目標を、改善できそうだという現実的期待を持って努力できるような具体的目標に変えること。
(例)ゴルフがうまくなりたい
ハンディキャップを五つ減らす
ドライバーのフェアウェイキープ率を上げる
ドライバーショットの多くがフェアウェイに落ちない原因を突きとめ、たとえば球を引っかけてしまう癖を直す
下に行くほど具体的になっているのがわかります。このようにスキルの向上に必要な要素に細分化し、そこから改善すべき具体的な目標を作り、それをクリアしようと取り組むこと。
ここでも「時間」ではなく、集中して何かに取り組む「回数」を目標にすると、「深い練習」に近づけられます。
4、強力で迅速なフィードバック
自分がやるべきことをきちんとできているのか、できていない場合はどこが間違っているのかを把握すること。
フィードバックなしではどの部分を改善する必要があるのか、目標達成にどの程度近づいているのかがわかりません。 → 最初はコーチの手を借りて、上級になれば自分で。
漫然とトレーニングを続けるのではなく、設定したトレーニングの目的を達成できているのか、自ら・あるいは第三者の手を借りて細かくチェックし、改善しようとすることが上達には必要だということ。
ちなみに上達をもたらさない「浅い練習」の特徴は
①集中力が欠如し、②目標があいまいで、③ 自分の現在の能力を超えて背伸びをするのを避けたがることである。
いかがですか?あなたのトレーニング、「浅い練習」になってはいませんか?
「深い練習」と、そしてその対極にある「浅い練習」。同じ時間取り組んだとして、この2つでは大きな差が出来るのは明白ですね。浅い練習の方がそりゃ楽でしょうが、その結果何も得られないんじゃ意味がありません。
すでに見たように、日本人が英語を習得するには大人になってから2000時間程度必要ですが、深い練習を心がければこの数字を短縮できるかも知れませんし、逆に浅い練習をしていては、 この時間はもっと伸びるかも知れません。
せっかく勉強に時間をかけるなら、成長をもたらす深い練習を心がけたいものですよね。そのためにも日々のトレーニングの強度を上げる、ということ。ぜひ考えてみてください。