自分に足りていなかったこと

では話せるようになるためにどうしたかというと、

何度もお話したように、「これだ」と思った方法(大量にインプットを重ねればいつか言葉が溢れ出す)が空振りに終わり、2年以上の遠回りをしましたが、そこはカットします。

そこで自分に欠けていたことに気づきます。

1つ目は「使う」という意識。そこまで学生時代を含めてとんでもない量の英文にあたってきましたが、その際には「意味がわかるか」という視点しかありませんでした。

足りていなかったのは「これを自分でどう使うか」という視点。この視点を持ってあの大量の英文にあたっていたら、そして実際に使おうとする経験を持っていれば、アウトプットで使える「武器」はこの時点でたくさんあったはず。

ずっと無意識のうちに「インプットさえできればいい」という受け身の姿勢が身についてしまっており、このためにアウトプットで使える「武器」(単語・表現)が極端に少なかったのです。

もう一つ欠けていたのが「自分の言いたいことを英語で表現する」経験。すなわちアウトプット自体をしてきていませんでした。これは、インプットを重ねていればいつか勝手にアウトプットができるようになるんだろう、と思い込んでいたため。

そうじゃない、アウトプットの力をつけるにはアウトプットをしなくてはならないのです。それも大量に。こんな当たり前のことに気づけなかったために、大きな遠回りをする結果となったわけです。

この二点に気づいて以来、普段のインプットの際にも「これは自分で使えないだろうか」と常に考え、使えそうなものは何度か口にして覚えてしまうなどして、武器を増やすこと、

そして実際のアウトプットに時間を割きました。

具体的にはまずは自分についてのこと(仕事、家族、趣味など)を一通り英語で言えるようにしました。

そしてそれを何度も口にしてスラスラと言えるように。30分程度一人で話し続けられる文量の英文を作ってそれをものにする頃には、アウトプットの力はかなり高まったのが感じられました。

もし時間をかけても自分が言いたいことが英語で表現できない、という場合はアウトプットで使える「武器」が少ない、ということですから、例文を覚えたりするなど、その武器を増やす努力が必要となります。

英検一級まで

で、さらに力をつけるために、もっとアウトプットの量を増やそうと。

この頃には英検一級の受験を意識するようになりましたので、どうせならその対策にもなるようなものを、と考えました。

英検はTOEICと違って、「書く」と「話す」力が試されます。ただし、「話す」が試される面接は、一次試験を突破できてからの話。ですからまずは「書く」力をつけようと。

それに、書く力が十分につけば、つまり言いたいことを英語ですっと表現できるようにしておけば、話す方だって対応できるだろう、という目論見がありました(文字ではなく口から出す、という違いだけですから)。

→ 読めるものは聞ける、ように書けるものは話せる、のです。文字でできることが音でもできる。まずは文字でできるようになることが先決。

そこでTOEFLのエッセイの問題を利用して、毎日「書く」ことに。TOEFL ESSAY TOPICS で検索したところ、182もの問題が掲載されたページが見つかりました。

例を挙げるとこんな問題です。

Do you agree or disagree with the following statement? Parents are the best teachers.

あなたは次の意見に賛成ですか、反対ですか?「親は最高の教師である」

まずは英語のエッセイの書き方をネットで検索して調べて「お作法」を学び、

その上で毎日2題ずつ、「30分で300ワード以上」という条件を守って書く。そしてその後ネットの辞書を使いながら、「本当はこう言いたかった」という自己ベストバージョンを作る、というやり方で進め、

3ヶ月かけてすべての質問に対して自分の解答を作りました。

インプットに関しては、最初に映画を使って、そのセリフを書き取り、登場人物に合わせて発音できるようにする、というトレーニングが大きな成果をもたらしてくれましたが、

アウトプットで力がついたのは、間違いなくこの「TOEFLエッセイ地獄」です。

こうしてアウトプットの力をつけて、さらに英検で問われる時事問題に対しても自分の意見をやはり「30分で300ワード以上」でまずは書けるように。

後は語彙ですよね。英検一級は大問の1問目がまるまる語彙力を問う問題ですから。これは一冊に絞ってそれをできるだけものにする、という取り組み。

で、一次試験を突破し、二次の面接では一次のエッセイ対策で「書いたこと」を口頭で言えるようにすることで一発で合格することができました。

話せるようになるために

話せるようになりたい、という方へのアドバイス。

・常にアウトプット、自分で使うことを意識すること

・アウトプットの力をつけるには、実際にアウトプットすること

(自分が言いたいことを英語で表現すること)

インプットのところで、読めないものは聞き取れない(読むが土台になる)、というお話をしましたが、アウトプットについても同じです。書けないものは話せない(書くが土台になる)のです。

スラスラと話せない、という方。では自分の言いたいことをスラスラと英語で書けますか?

まずは自分に関することを一通り言えるようにする。10分以上一人で話せるだけの文量の英文を作り、ものにする。

とにかくアウトプットの機会を貪欲に求め、これを英語でなんと言うのだろうと考え、実際に英語にする。日記を英語でつける、というのもありです。

わからないものは調べて自己ベストを作り、そうして一度作ったものは次には瞬間的に出せる武器にできるよう、何度も口にして自分のものにする。

こういう取り組みで「瞬間的に言えるパターン」を増やしていくのです。

言いたいことを英語にできない、という場合は「英文を作るための武器」が足りていないということですから、瞬間英作文に取り組むなどして、まずは基本的な英文を瞬間的に作れるようにする必要があります。

会話サービスの利用

自分のケースは特殊で、英検一級に合格するまで外国人と会話しませんでしたが、このアウトプットを鍛える段階で、会話サービスを利用するといいと思います。

その際もノー準備でただ会話だけして終わり、では力は付きません。

「次の会話ではこれについて話せるようにしよう」としっかり準備をして臨むこと。言いたいことをネットで調べつつ、自己ベストの言い方を見つける。それをスラスラ言えるように練習をする。

で、会話を録音しておき、後で復習。会話の中でうまくいかなかったところに関して、「本当はこう言いたかった」という自己ベストの返しを、またネットで調べつつ英文を作り、次に同じような場面があったらスッと言えるように練習しておく。

こういう取り組みをすることで、会話を楽しみながら上達することが可能になるはず。

ただし重ねて言っておきたいのは、あくまでも上達するのは「自主トレ」の時間です。つまり会話と会話の「間」をどう過ごすかで上達は決まるということ。これを心に刻んでトレーニングを積んでください。

ここまで、自分の足取りを元に、聞き取れて話せるようになるための方法をギュッとお伝えしました。

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